新卒ポーカープレイヤーのその後

意識高い大学生だったのになんとなく新卒捨ててポーカーしてたら普通に社会に置いてけぼりにされてた話 Twitter:https://mobile.twitter.com/alcohol_hole_

感動は理論を超えるって話

 

「今、なんか鈴の音した?」

2002年12月25日午後8時。話の流れを断ち切るようにそう口にしたのは、次男だった。「え?もしかして?」他の家族たちも、次男に続くように白々しい態度を取り始めた。食卓に、静かなざわつきが広がる。ゴウゴウと息を荒げるファンヒーターの音が、やけに耳に入り、それに呼応するように、胸は高鳴る。「そんなわけがないだろ」そう思いながらも、頭では理解しながらも、バタバタと玄関先へ向わざるをえなかった。

残り香すら感じられるそのいかにもな包装を見て、自分は動揺した。トイザらスの冊子に直接二重丸を書き込み、丁寧に切り取り、ツリーのど真ん中に掛けておいた、あの、ゴム玉がたくさん入った、一週間もすれば粗大ごみになってしまうであろう謎・ドームではないことは大きさからして一目でわかった。しかし、そんなことはどうでも良かった。中から出てきたのがエキサイトボクシングという一ミリも興味の無いクソゲーだったことだって、どうでもよかった。

 

 

 

 

これ、マジで「サ」なのか?

 

 

 

 

もう、脳内はその話題で持ちきりだった。「そんなんいるわけないじゃん」2年2組の足の速いオピニオンリーダー・菊地君だってそう言っていたし、もしここですっかりと「サ」の存在を信じてしまったら、クラスで笑いものにされてしまうだろう。

そもそも、「サ」などいるわけがないのだ。それが齢8年、酸いも甘いも経験してきた当時の自分が導き出した結論であり、それまではそれが正しいと信じて疑ってなどいなかった。しかし、今回はあまりにも「サ」の仕業たる条件が揃いすぎてる:

 

①鈴の音が聞こえた→は?噂通りじゃん

②家族全員一緒にいた→は?両親じゃないじゃん

③元々袋は無かった→突如現れた→は?空からじゃん

 

そしてなんといっても、今回の手口は、自分が寝ている間に階段のちょっと広い段に無造作に袋を置いていくだけの、ガサツな父親の影を感じさせる例年の「サ」とは違い、いかにも「サ」らしい手口だ。なんというかこう、ファンタジック&ファンタスティックだ。信じられなくても信じたくなってしまうほどに。

この時点で、空飛ぶソリやトナカイを具体的に脳内に描いてしまうほどにその存在を盲信し始めていたが、念には念をと、家族全員に「鈴の音が聞こえたか」と問うた。するとだ、なんと言い出しっぺの次男以外の皆も、「聞こえたよ」「そういえば聞こえたような...」などと供述し始めたのだ。

6人家族のうち1人だけなら勘違いかもしれない。しかし5人も言うならこれはもうマジの「サ」、いや、「サンタ」だろう。小さな小さな脳味噌は、そう確信した——————。 

 

 

 

 自分は、毎年この時期になると、この2002年のことを思い出す。

当然、この一連の出来事のあと、菊地君には馬鹿にされまくった。さらに、これは本当に恥ずかしい話なのだが、中学生になり、クリスマスに両親から直接現金を貰ってネトゲに課金するクソガキになってもなお、内心ではサンタの存在を肯定し続けていた。まあ、高校生にもなると、さすがに「隣人の高松さんが時計見ながらテキトーに鈴振ってポイッと袋置いてったんだろう」という現実的な見方をし、その存在を否定するようになっていたが。

しかし、大学を卒業した今はこう思うのだ。サンタというのは、子どもに幸せになってほしいという大人達の気持ちが生み出した偏在通念であり、それはもう実在していると言っても過言ではないのだろうかと。子どもが健気に育って欲しいという大人達の想いが、サンタという形になってこの世に生まれてきたのではないかと。したがって、あのときの自分は、確かにサンタからプレゼントを貰ったと言えるのではないかと。お、なんかええ話やん?

 

 

 

 

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収支報告だ。年越しカジノでのお年玉+$2,700も相まって、12月収支は+$7,000というエリートサラリーマンのそれを叩き出すことが出来た。帰国までこのまま行けば、当初からのささやかな目標だった+$20,000も普通に突破できるかもしれない。

前回記事でも言ったように、12月に入りプレイ時間が三倍増&自己流搾取が完全に型にハマってというもの、やはり負ける気がしない。相手に合わせ、ただのTPで限界までバリューを搾り取ったり、レンジ優位のピュアブラフでボッコボコにしたり、普通に考えればそこそこSDVありそうなマージナルを臨機応変にブラフに変えたり、そりゃもうやりたい放題だ。このまま大きな下振れもなく順調に事が進んでほしいものである。

 

 

さて、本格的に帰国の日が近付いてきた。

基本週二回の3,4時間というクソシフトで細々とやっていたバイトも、しれっと契約期間を終えた。最後の最後に出場して優勝してこの新卒生活のオチにしようとしていたトーナメントも、開催が二週間が遅れ、帰国日とドンピシャで被るというくだらないオチで水の泡になってしまった。もう、特にすることもしたいこともない。

おそらく自分は、このままカジノとシェアハウスを行き来するだけの日々を過ごし、そのままあっさりと帰国するのだろう。くだらない生活だったと言えばそれまでだが、嫌々言いながら働き、週一で二郎を貪り、淡麗グリーンラベルを流し込み、ハイライトメンソールをシパシパする来年度からの生活に比べれば、幾分かマシな生活なのだろう。

だから、今はこの今しか経験しえないくだらなさを全力で噛みしめていきたい、そう思うようにしている。