新卒ポーカープレイヤーのブログ

意識高めの大学生だったのに急に色々終わっちゃって新卒を捨てた男がポーカーで生計を立てたくてとりあえずオーストラリアで頑張ってみる話 Twitter:https://mobile.twitter.com/alcohol_hole_

確率は悪い意味でも裏切らないって話

正月の祖父家には得も言えぬ良さがある。

風呂炊きの組木が燃え崩れる音。石油ストーブのクセになる香り。冷蔵庫には、親戚が今朝取ったばかりのカンパチの刺身。大鍋には、畑で取れた野菜がたくさん詰まった郷土料理。炬燵に籠もり、箱根駅伝を横目に、ただいたずらに過ごす昼下がり。

ふと、何かをしたくなる。餅でも食べようか、それとも海沿いを散歩しようか、はたまた山を登ろうか。有り余る時間をこのまま無駄に過ごすのも悪くはない選択だ。しかし、この非日常溢れる環境にいて何もしないワケにはいかないと、都会の生活に慣れ切った自分の身体は理解しているらしい。とにかく、何かをしなければ気が収まらない。

 

結局自分は、バカラテーブルへ向かう。

もともと大部分を民宿として利用していた情緒のある木造建築の祖父家だが、その地下には、外観からは想像もつかないような煌びやかな賭博施設が広がっている。その入口を通過し、妖艶な光に包まれるや否や、「貰ったばかりのお年玉を倍にしたい」という邪念が、故障したドラム式洗濯機のようにやかましく駆け巡り出す。

諭吉は、ものの十秒で消えた。もう持金はない。そして、重い重い脚になんとか力を加え、地下賭博場を跡にしようとする。洗濯されぬまま溶け出した邪念は、じわじわと足元に溶け出す。そんな自分の足跡からは、なんだか下水道のような臭いがする気がして、何度も何度も後ろを振り返った———————

 

 

 

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9月9日AM08:30、そんな悪夢をくぐり抜けて目を覚まし、ため息をつく。

そのため息は、夢の中ですらバカラをしている自分に対する情けなさや、反省の念から出るものではない。そう、それは「この夢ぐらいの負けで済んでいれば良かったのに」という意味合いを持つ、モルボルも卒倒してしまう最悪なため息だった。そしてそのまま、この二週間の-$7000を大逆転すべく、わざわざ遠出して優勝賞金$18,000のポーカーの大会にも参加したりもしたが、やはりそう上手くは行かなかった。

 

その次の日、日本に$7,000を送金した。ここで更に地獄へ歩み寄ろうとしないぐらいに理性的だったことは、不幸中の幸いである。ちなみにこのまま完全にバカラを断ち切ることが出来れば、結局のところ+$4500で終わるということになる。一時は$12,500まで行ったという事実抜きに見れば、十分なハッピーエンドだろう。

そんなハッピーエンドを迎えるためにも、今後は自らに課した三箇条(:①財布にはポーカーの参加額以外を入れない。②ATMに一切金を入れない。③$手持ちが$800を超えた瞬間、シェアメイト達に余分を保管してもらう。)を遵守していきたい。

 

さて、気が付けば、オーストラリアに来て5カ月が経っているらしい。出国前の初回記事では、「秋頃には山奥にテントを張って可食野草を貯め込む生活をしているだろう」などと冗談混じりに言っていたが、まさかシェアハウスにバリケードを張って自分の金を他人に貯めこんでもらうような生活をしているとは思わなかった。

1日に$250勝って大喜びしていた4月の自分は、もう死んでしまった。「たった5カ月でこんなにも変わってしまうのなら、帰国する頃の自分は、一体どうなってしまっているのか?」数時間に一度そんなことをぼんやりと考えては、冷汗があふれ出る。まあそう言いつつも、自分は明日からも一切の躊躇なく$250のブラフをテーブルに投げ入れ続けるのだろうが。

 

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